吸収缶を交換せずに使い続けると・・・ ◎破過曲線は、国家検定規格やJIS規格に規定された試験ガスによるもので、ガスの種類によっては有効時間が異なることが ◎短時間で繰り返し使用をする場合、一定の濃度であれば使用した累積時間での管理方法もあります。この場合は、吸収缶 表1は、国家検定規格の除毒能力試験ガスであるシクロヘキサンによる破過時間を基準とし、同条件下で試験ガスを各種有機 ◎保管日数5日までは算定有効時間まで使用可能。10日保管した吸収缶を再使用した場合においても破過基準濃度(5ppm)

●適切な吸収缶交換を実施するために作業場ごとにあらかじめ吸収缶交換の
スケジュールを立てておきましょう。
吸収缶交換に役立つツールとして交換台帳をご用意しています。
▼防毒マスク用/防毒用電動ファン付き呼吸用保護具の吸収缶交換台帳はこちら
●吸収缶の交換が行えるよう予備の吸収缶を常備しておきましょう。
防毒マスク、防毒用電動ファン付き呼吸用保護具の
吸収缶交換について
除毒能力がなくなった吸収缶を透過してガスを吸入してしまいます
吸収缶を使用し続けると、吸収缶内の吸着剤が有害ガスで飽和して、有害ガスが除毒されずにそのまま透過してしまう状態に
なります。この除毒能力が失われた状態を「破過」といいます。
破過した吸収缶は全く除毒能力がなくなるため、吸収缶が破過する前に新しい吸収缶への交換が必要です。
破過するまでの時間を「破過時間」といいます。破過時間は発生しているガスの「濃度」と「種類」に影響されます。また、
使用する環境の「温度」や「湿度」などにも左右されるため、破過時間(有効時間)に対して余裕をもって吸収缶の交換時期
を設定する必要があります。
●ガスの除毒原理って??(有機ガスの場合:物理吸着)
吸収缶の主剤となる活性炭は、非常に微細な穴(細孔:左イラスト)が形成されていて広大な表面積を持ちます。
活性炭の表面には引力(ファンデルワールス力)が生じており、気体中の分子が引き付けられ吸着し、凝集、液化し、毛細
管現象により細孔内に有機ガスが保持されています。
物理吸着により除毒する有機ガス用吸収缶は、高温度、高湿度になるほど破過時間が短くなる傾向があるため注意が必要です
(右イラスト)。

◎無機ガスの除毒原理はこれとは異なり、化学吸着や触媒反応などがあります
吸収缶の交換のタイミング
算定した破過時間(有効時間)に対して余裕をもった交換時期を設定し
吸収缶の交換スケジュールを立てましょう。
吸収缶の破過時間(有効時間)を確認するには、ガス濃度と有効時間の関係をグラフで表した「破過曲線図」を確認します。
破過曲線図は、吸収缶に添付の取扱説明書に掲載されています。
破過時間は吸収缶によって異なります。また破過時間は作業環境のガス濃度と種類、温度、湿度などに影響されるため、破過
時間に対して十分な安全値を考慮して吸収缶の交換スケジュールを立てましょう。
破過曲線図の見方
KGC-1型M有機ガス用の場合には、環境中のシクロヘキサン濃度が
300ppmの時(温度20℃、相対湿度50%)有効時間は200分。
200ppmの時は有効時間は300分です。
◎ガスの濃度が高ければ有効時間は短く、ガスの濃度が低ければ有効時間は長くなります。

あります。
添付のカードの使用時間記録表欄などに使用時間を記録しておき、算定有効時間に対して余裕があるうちに、新しい吸収缶
と交換しましょう。
吸収缶の交換時期を設定する際の留意事項
・破過曲線図の情報は、あくまでも目安です。十分な安全値を考慮して交換基準を設定しましょう。
・有効時間はさまざまな要素によって変動します。使用時間が常温・常湿・常圧から大きくはずれる場合は、著しく能力が
低下する場合があるので温度、湿度等の状況に対して余裕をもった基準を設定しましょう。
・メタノール、二硫化炭素、アセトン、ジクロルメタンなどは試験ガスより破過時間が著しく短くなるので注意が必要です。
詳細は〈参考1〉にて▼
このような試験ガスより破過時間が著しく短いガスに対して使用した有機ガス用吸収缶は再使用できません。1回の使用で
廃棄してください。
・有機ガス用吸収缶の場合、算定有効時間の半分以上使用したものは5日以上保管すると残存使用時間が著しく短くなる場合
がありますのでご注意ください。 詳細は〈参考2〉にて▼
・嗅覚は麻痺する場合があるため、臭気だけによる交換の判定はできません。
・直結式防毒マスクの吸収缶は再使用できません。
防じん機能による交換時期
防じん機能を有する吸収缶は、次のいずれかの状態になった時にも新しい吸収缶に交換します。
また吸収缶にフィルタを併用して使用する場合には、新しいフィルタに交換します。
・使用中に息苦しくなった場合
・フィルタが破損、変形した場合
◎必ず使用する吸収缶、マスク本体の取扱説明書を必ず確認の上、吸収缶の交換を実施してください。
吸収缶の廃棄方法
廃棄する吸収缶は分解せず、有害物質が再飛散しないよう袋などで密封して廃棄します。取扱説明書を確認の上、有害物質の
付着があることを産業廃棄物処理業者に伝えて適切な処理を依頼しましょう。
◎外気と遮断し、乾燥した冷暗所に保管してください。
◎未開封の場合は、保存期限内であれば除毒能力はほとんど低下することはありませんが、吸収缶の袋に記載されている保存
期限を経過したものは使用を避けてください。
防毒マスク/直結式小型:製造年月より2年
直結式:製造年月より4年
防毒用電動ファン付き呼吸用保護具/製造年月より2年
◎未開封でも袋に穴が空いていたり破れていると空気中の水分やガスを吸着してしまい除毒能力が低下、もしくは無くなって
いる場合がありますので、注意してください。
有機ガスは、その分子量、沸点、蒸気圧等の性質がそれぞれ異なり活性炭への物理吸着は、「分子量の大きい物質」、「沸点
のより高い物質」、 「蒸気圧のより低い物質」が吸着されやすい特性があります。そのため有機ガスでも、有機溶剤によって
吸収缶の破過時間(有効時間)は異なります。
溶剤にて試験し得られた破過時間とを比較した比率が「相対破過比」です。
メタノール、二硫化炭素、アセトン、ジクロルメタンなど試験ガスに対して破過時間が短いガスは、相対破過比が低くなりま
す。
例)アセトンが300ppmの濃度で発生している作業環境で、有機ガス用吸収缶「KGC-1型M有機ガス用」を使用する時の
有効時間
①アセトンとシクロヘキサンとの相対破過比…0.49(表1より)
②300ppm濃度のシクロヘキサンに対する有効時間…200分(図1より)
③アセトンの有効時間の目安…200分×0.49=約98分(上記①②より)
有機ガス用吸収缶は、環境中に発生している有機ガスの種類、濃度等が明確で一定である場合に限り、短時間の使用を繰り返
したトータルの時間が算定有効時間に達するまで継続して使用することが可能です。
ただし、算定有効時間の半分を超えて連続使用した吸収缶は、その後5日を過ぎて保管すると著しく残存能力が低下するため、
再使用をせずに交換しましょう。
算定有効時間の半分まで※連続使用した吸収缶を保管した場合の除毒能力への影響
※算定有効時間が100分の有機ガス用吸収缶を50分まで使用
に近い漏れ濃度となっていて、すぐに使用できなくなる。
保管した場合に有効時間が短くなる理由
有機ガスは、吸収缶の上流側(ガスが入ってくる側)から物理吸着されます。その後、吸着されたガスは吸収缶を再使用する
までの保管期間中に下流側へ拡散移動して吸収缶内で濃度が平均化されます。そのため、長期間保管した有機ガス用吸収缶
は、再使用する場合には下流側から透過しやすい状態になってしまっているのです。
有機ガス用吸収缶を繰り返し使用する場合は、長期間の保管は避け、早めに交換する管理を行うことが大切となります。