「電解水」の基礎知識

水を電気分解して得られる
強酸性電解水と強アルカリ性電解水

電解水は、水道水(H20)と食塩(NaCl)を原材料として、有隔膜式電解槽内で電解して得られる水です。
陽極(+)側に生成されるのが強酸性電解水で、次亜塩素酸(HOCl)を主な有効成分とし、pH2.2-2.7、酸化還元電位(ORP)+1,100mV以上、有効塩素濃度20~60ppmという物性を示します。 その殺菌力は有効塩素濃度40ppmの強酸性電解水で、同じ塩素系消毒剤である次亜塩素酸ナトリウム0.1% (1,000ppm)を上回る(約25倍)殺菌活性を示します。

強アルカリ性電解水は、強酸性電解水と同時に陰極側から生成される副生成物です。
pH値は10.0以上の強アルカリ性を示し、酸化還元電位(ORP)も-800mV以下に低下します。強アルカリ性電解水は、水酸化ナトリウム(NaOH)を微量に含むことから、タンパク質の溶解や油脂を乳化させる力(洗浄力)を持っています。

反応式

強酸性電解水の特長

優れた殺菌力

強酸性電解水の殺菌基盤は、電気分解により発生する次亜塩素酸(HOCl)です。物理化学分析(ESR)の結果、強酸性電解水中にはヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化水素(H2O2)が生成している事が分かっています。興味深いことに、これらの化学種は生体内における好中球が生成するものと同じです(好中球は白血球の一種で生体内に浸入してきた細菌を貪食し殺菌することで感染を防ぐ役割があります)(図1)。

また、強酸性電解水で処理した細菌は、細胞表面や菌体内の核酸(DNAやRNA)やたんぱく質が損傷を受けることが電子顕微鏡観察、核酸分析たんぱく質分析によって明らかになっています。さらにメチオニン(アミノ酸の一種)のS(硫黄)が酸化されることも明らかになっています。これらの現象はヒドロキシラジカルの作用によるものです。

強酸性電解水は、薬剤耐性菌(MRSAや緑膿菌など)を含めた病原菌、腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ菌など幅広い食中毒菌に対して即効的殺菌活性を示します。また、消毒剤をはじめとする化学処理に抵抗性を示すとされる芽胞形成菌に対しても殺菌効果を示します(図2)。

図1 強酸性電解水の殺菌機序(好中球との類似性)
図2 芽胞形成菌への作用(電子顕微鏡写真)

高い安全性

強酸性電解水は有機物に触れると普通の水に戻るという特性を持っています。従って他の消毒剤と違って毒性も弱く、人体や環境に対する害はほとんどありません。
強酸性電解水は以下の安全性試験において良好な成績を得ており、常用消毒薬に比べて安全性が高いと判断されます。

①急性経口毒性 ②皮膚一次刺激性および皮膚累積刺激性 ③急性眼刺激性 ④皮膚感作性 ⑤口腔粘膜刺激性 
⑥細胞毒性 ⑦復帰突然変異原性 ⑧染色体異常誘起性 ⑨亜急性毒性 ⑩ボランティア対象皮膚試験
医療用具承認装置による強酸性電解水の規格基準(医療編)2003年版

低コスト

強酸性電解水を生成するのに必要なものは水、電気、食塩のみ。ランニングコストは1リットル当たりわずか0.6 円です。強酸性電解水を使用することで、従来かかっていた消毒経費を大幅に削減することができます。

強アルカリ性電解水の洗浄効果

油脂を素早く乳化

強アルカリ性電解水は、石鹸と同じ成分の水酸化ナトリウム(NaOH)を微量に含んでおり、タンパク質の溶解や油脂を乳化させる力を持っております(図3)。また、電解時に発生する水素ナノバブルが物理的な剥離効果を生み出し、優れた洗浄効果(相乗効果)を発揮します。医療機器等に付いた血液や粘液など汚れを素早く落とすため、強アルカリ性電解水を前洗浄として使用する事により、細菌への接触が容易になり、強酸性電解水の殺菌効果をより高める働きがあります。

強アルカリ性電解水と水道水の油脂乳化比較

血液汚れも除去

強アルカリ性電解水は、図4に示す通り血液等のタンパク質に対して非常に高い洗浄力があります。内視鏡だけでなく医療施設(処置室、救急救命センター等)における、床・壁、ストレッチャーの血液汚れ落としにも利用できます。

血液汚れに対する強アルカリ性電解水の洗浄効果